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4度目の正直 21

向井に“渚”と呼ばれることは前にも何回かあった。 けど、今となっては橘に“渚”と呼ばれることが特別みたいに思えて、向井にすら呼んで欲しくないと思ってしまう。 なんか、すげー乙女思考だし自分勝手だと思うけど……向井は親友であって恋人ではないからそう思ってしまうのは仕方ないことなんだと思う。 短い呼吸と一緒にのしかかる予想外の向井の想い。 すぐ近くで聞こえていたはずの花火の音は、今はやけに遠くに聞こえるくらいに俺たちの間に流れる空気はぎこちなく……静かだ。 「……俺、向井のことすげー信頼してるし、好き。……でも違うんだ。」 「何が違うんだよ。好きなら言うことねーじゃねーか。」 「確かに向井は好きだけど、橘とは好きの種類が違うって言うか……橘ってさ、自分勝手だし強引だしムカつくことばっかでどうしようもないくらい俺様だけど、俺のことになると余裕なくなって人一倍弱気になる。 ……そんなとこ全部ひっくるめて好きなんだ。 それに…向井から見たらそうは思えないかもしれねーけど、あいつは俺のこと……大事に、してくれてる……だから……ごめん。」 こんなに橘のことを誰かに語ったことは初めてで、口を開くと自分でも不思議なくらい想いが言葉になった。 相変わらず身体中は火照ってるし、きっと顔だって赤い。 向井に話す度にこんなにも橘のことが好きなんだって想いが膨らんで、上昇し続ける熱と共に俺は今さらながらそれを実感していた。

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