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4度目の正直 27

暗闇に浮かび上がる向井の表情は鋭く俺を見下ろしていて、だけど一瞬だけ悲しげな顔をしたように思えた。 「向井……」 「でもまぁ…あいつのお陰で俺は相原のことを親友以上に想ってたんだって気付いた。きっとあいつが現れなかったらずっと親友のままだったんだろうな。」 そう…どこか他人事のようにフッと小さく苦笑すると、下半身を撫でていた手が俺の頬へと移動して、親指の腹で下唇をなぞってきた。 「この唇であいつと何度もキスしたんだよな……」 「…………………。」 「この口からあいつに……好きって……あいつに向かって何度も……愛を囁いたんだよな……」 そんな……泣きそうな顔で、俺を見ないで欲しい。 そんな顔をされたって……俺は混乱するばかりだ。 色んなことがいっぺんに起こり過ぎて、頭の中がぐるぐると渦を巻いているようで、何を言ったらいいとかどうしたらいいとか可笑しいくらいに頭が真っ白になる。 だけど、俺を見つめる向井の目は本気で、こんなにも想われていたんだと…… それだけは理解出来た……いや、理解せざるおえなかった。 「………あいつとのキス、好きか?」 「…………な、に…」 そしてぽつりぽつりと誘導尋問のように問い詰められていく。 その間も唇をなぞる指先は止まらず、ゆっくりとゆっくりとそれは意思を持って動き続けていた……

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