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第13章 パンドラの箱 1
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ドクドク、ドクドク……と、心臓の音が速い。
肌に感じるサラッとしたシーツの感触と、俺の荒い息遣いしか聞こえない恐ろしく静かな空間。
ここ……どこ……なんだ……
身体は鉛のように重く、目も開けられないくらい怠く息をするのもやっとでそれ以上を考えられる状況じゃない。
ただ、意識が朦朧とする中俺は、熱い身体をなんとかしたくて…馬鹿みたいに“熱い”と繰り返していた。
「………んッ…ふッ…あつ…い…」
異常なほどの身体の火照り……何かがその身体を包み、更に熱は上昇する。
そして頭の中に響いてきたその声。
…………渚…………
………たち…ば…な?………
頭ん中の遠くであいつの声がした気がした……
どうにもならないこの身体をなんとかしたくて、夢なのか現実なのか訳が分かっていないまま、その声が橘なのかも分からないけど、俺はその声に必死に訴えた。
「…………熱い…お願い…だから…なんと、か…して…ッ…たち…ばな…」
「…………渚…」
そして、“渚”と耳元で呼ばれる度に俺の身体は熱く欲情していく。
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