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パンドラの箱 7

電話の相手が本当に橘だとして、 なんで橘と向井が…… 普段、落ち着いてよく考えればすぐ分かることさえ、焦るほど複雑に絡み合って真実をぼやかしてしまう。 だから、その答えだって実は単純なことなのに俺はそんな単純なことさえ見落としたままでいた。 そして向井はと言うと俺がそんな状態の間もずっと話し続けていて、とりあえずは気付かれないようにと耳だけに神経を集中させ聞き耳を立てた。 すると、 話しはとんでもない方向へと進んでいた。 『────だからっ、相原は疲れ果てて寝てるから電話には出れねーよっ!……あ?俺たち?………ヤったって言ったら?』 ちょっ………い、ま…… “ヤった”……とか言わなかったか?! ヤった……… ナニを………?! ………えっ……ち……?! 頭ん中がサーと真っ白になっていく。 仮に、俺と向井がエッチをしてしまったとして、橘がその事実を知ったとしたら…… 謝って済むレベルではないことは馬鹿な俺の頭でも分かる。 ましてや、橘ならなおさら。 ど、どうしよう……… これって、やっぱり浮気……だよな。 浮気──── その単語が頭の中を駆け抜けた時、胸の奥がギューとして、心臓を捻り潰されたように痛くなった。 痛くて、苦しくて、こんな胸の痛みは初めて…だった。 そして俺は、どうしたらいいか分からなくなって…全てから目を背けるかのように、顔まですっぽりとシーツを被って自分から空間を遮断した。

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