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パンドラの箱 16

ぶり返してきた寂しさに気付かないようにと、乱れる気持ちを何とか落ち着かせようと深呼吸をしてみる。 だけど、全く言うことを聞いてくれない俺の心。 そんな壊れそうになる気持ちを必死に落ち着かせ、そこに記されているあいつからの言葉を……一文字一文字ゆっくりと目で追っていく──── “渚へ 寂しい思いをさせてごめん。 渚がこれを読んでるということは、寂しさに耐えられない何かがあったんだろう。 だけど、その寂しさを今の俺には埋めることが 出来ない。 でも、俺は渚のことを誰よりも大事に想ってる。離れていても、この手で抱きしめられなくても、それは渚を好きになった時から休むことなく……毎日、毎日思ってることだ。 だから、渚も一人で不安になることがあっても、オレを信じて迎えに行くまで待っててくれ。 だけど、どうしても寂しさに耐えられなくなったらこの番号に掛けていいよ。 じゃあな。 優人より ” 「………ッ……あいつ…」 気付いたらぽたぽたと零れ落ちていた涙。 それはあいつからの手紙の上に容赦なく落ち濡らしていった。 そして、霞む視界に映るのは紙の一番下に書かれている数桁の番号と、“愛してる”の文字。 相変わらずのあいつらしい俺様の文章に安堵と嬉しさに思わず涙が出たけど、もう1つこの涙には理由がある。 それは、こんなにも俺を想ってくれている橘を裏切ってしまった申し訳ないと言う思いの涙。 「………ッ…ごめん、橘…ッ…俺……お前に…好きで、い続けてもらう…ッ…資格………ねー、よ…ッ…」 その計り知れないほどの罪悪感を感じながら、俺はぽつりぽつりと一人呟き…ただ肩を震わせ泣き続けることしか出来ないでいた。

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