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パンドラの箱 17
どれくらい泣いていたのだろう。
泣いていたのなんて、きっと時間にしたら数分のことなんだろうけど……なんだかそれはとても長く感じられた。
気付いた時には頬に伝っていた涙はすっかり乾いていたし、流れていたオルゴールの音もとっくに止まってしまっていたから、多分数十分は経ったんだろうけど、いろんな感情が溢れだし時間の感覚さえ分からなくなっていた。
まだ気持ちを完全に落ち着かせることは出来ないでいるけど、それでも一頻り泣いたら少しだけ落ち着いたような気もする。
「……………はぁ……」
だけど、口をついて出るのはため息ばかり。
ここに来たの……失敗だったかなぁ……
橘と出会ってから、俺は涙もろくなったと思う。
今まで生きてきて泣くほどの気持ちになる出来事がこんなにあるのはやっぱり本気で人を好きになったからなのだろうか。
………そして、心が壊れそうになるくらい切なく苦しくなるのも。
「……………はぁ……」
手の内にある橘からの手紙。
それをそっとテーブルに置くと空になったまま置かれてある箱を手に取る。
強く握り過ぎていたのか置いた手紙には両端にぐしゃっと折り目が付いていた。
そして、箱に付いているゼンマイを回すとまたオルゴールは軽快に音を刻み出した。
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