387 / 498
パンドラの箱 19
あいつに想われているんだと自覚すればするほど、心が痛み恐さは増していく。
だから、向井から聞いたあの“わかった”と言う橘の言葉……その一言が胸に突き刺さる。
嫌われた確率は……ゼロではない。
いや、むしろその可能性の方が高い。
だから……今更言い訳がましく電話していいものか、正直分からないのも事実。
だけど、あいつに限って俺に愛想尽かすとか……
いやいや今回ばかりはそれもありえる気がする。だってこの状況知ってなんとも思わないわけがない。
はぁ……
ため息を吐き出した分だけ気持ちもどんどんと重くなって、悪い方にばかり考えてしまう。
そんな、無限ループにハマったように俺の頭ん中はぐるぐると渦を巻いていた。
そして、散々悩んだ末、
震える手で手にしたのは橘からの手紙ではなく、オルゴールの箱。
………この曲をもう一度聴いて音が止んだら、
────橘に電話を掛けよう
葛藤する気持ちにけりをつけるかのように、俺はそう決断した。
一巻き一巻きゆっくりとゼンマイを回し、もう回らなくなったとこで手を離すと、オルゴールの音は再び部屋中に響き渡っていく。
そして、心を落ち着かせるようにゆっくりと目を閉じ“俺、しっかりしろ”と心の中で何度も繰り返した。
ともだちにシェアしよう!