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パンドラの箱 19

あいつに想われているんだと自覚すればするほど、心が痛み恐さは増していく。 だから、向井から聞いたあの“わかった”と言う橘の言葉……その一言が胸に突き刺さる。 嫌われた確率は……ゼロではない。 いや、むしろその可能性の方が高い。 だから……今更言い訳がましく電話していいものか、正直分からないのも事実。 だけど、あいつに限って俺に愛想尽かすとか…… いやいや今回ばかりはそれもありえる気がする。だってこの状況知ってなんとも思わないわけがない。 はぁ…… ため息を吐き出した分だけ気持ちもどんどんと重くなって、悪い方にばかり考えてしまう。 そんな、無限ループにハマったように俺の頭ん中はぐるぐると渦を巻いていた。 そして、散々悩んだ末、 震える手で手にしたのは橘からの手紙ではなく、オルゴールの箱。 ………この曲をもう一度聴いて音が止んだら、 ────橘に電話を掛けよう 葛藤する気持ちにけりをつけるかのように、俺はそう決断した。 一巻き一巻きゆっくりとゼンマイを回し、もう回らなくなったとこで手を離すと、オルゴールの音は再び部屋中に響き渡っていく。 そして、心を落ち着かせるようにゆっくりと目を閉じ“俺、しっかりしろ”と心の中で何度も繰り返した。

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