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パンドラの箱 21
数秒の無音の後、聞こえてきた呼び出し音。
それが繰り返される度、俺の心臓は破裂しそうなほどドキドキしていた。
だけど、一向に繋がる気配がないことに一抹の不安が過る。
…………出てくれない、のか?
そんな不安が過った矢先……
それは突然だった。
『………もしもし、渚っ?!おまえ今何処に居るんだ!!』
「…………っ…えっ…」
久しぶりに聞いた橘の声。なのに、今までの緊張がぶっ飛ぶくらいの勢いで俺を捲し立て、いきなりのことに俺の頭ん中は真っ白。
『おいっ!聞いてるのかっ!』
「……………あ、あの…」
『何のんびりしてんだよ、今何処にいるのか言えっ!!』
「だから……」
あまりにも突然のことに、返事をするだけで精一杯だし、俺はこの状況を未だに飲み込めていない。
『何処だ?!早く言えよ!!』
「あ、あのさ……さっきからそればっかだけど、“久しぶり”とか、ねーの…それに、俺……」
『そんなの会ったら言うからいいんだよ!それより何処にいるんだ。さっきおまえんち行ったらどっか出掛けたって言われたし……』
────会ったら言う?
────おまえんちに行った?
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