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パンドラの箱 27
目の前にある温度が感じられない真っ黒なドア。
携帯を持つ手とは反対の手でそれにそっと触れてみる。
冷たい……
冷たくて、重くて……
『おい、渚?聞いてるのか?』
ドアの向こうから聞こえるのか携帯から聞こえるのか分からないくらいに聞こえてきた橘の声。
声が反響して不思議な感じがする。
冷たいドアに触れながら、向こう側には橘がいるんだよな…ってそんな現象で更に強く実感した。
『なにやってんだよ。早く開けろっ。誤解は十分解けたろ?』
そうだけど、まだ自分の中では許せない部分も沢山ある。
このまま鍵を開けてしまったら俺は…確実に橘に甘えてしまう。
それでもいいのか。
「………俺、自分が許せない。好きな人を心配させて迷惑かけて……怒らせて……」
自分がもっとしっかりしてればこんなことにもならなかったし、それに、俺のせいで橘はわざわざ日本に帰ってきてくれた。
だから、何だかすんなりドアを開ける気になれない。
『………なぁ、渚?渚は、オレのこと好き?』
なのに、そんなどうしたらいいか分からなくなってる俺に、橘は唐突にそんなことを聞いてきた。
「………す、好きだからどうしたらいいか分からなくなってんじゃねーか!」
『………オレも渚が好き。』
「…っ…なっ…」
こいつは何をさっきから言ってんだ。
別に今、気持ちを確かめ合わなくったって……
『それでいいじゃん。』
「は?」
『それがオレには一番重要なんだよ。向井の一件はもう済んだことだ、正直これ以上どうでもいい。だけど、渚がオレより向井を好きになったとかなら話はまた変わってくるんだけど…違うだろ?』
「違うっ!俺は……橘が………好き。好きだよ、だからっ……!!」
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