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パンドラの箱 28

好きだから別れようとか変なこと考えたし、好きだからこのドアを開けることに躊躇してるんだ。 好きだから──── 全てのベクトルはそこに向いているからこその行動なんだと思う。 『なら、もういい。オレは、渚がオレを変わらず好きでいてくれているなら、それだけでいいんだよ。』 「………た…ち…ばな…」 『今朝の電話で、向井に“分かった”って言ったのは、このまま向井と話しをしてるくらいなら渚に直接聞いた方がいいと思って“分かった”って言って電話を切ったんだ。別に愛想尽かしたわけじゃねーし、呆れたわけでもない。』 「そ……そうだった…んだ…」 『つか、あいつオレに向かって“相原は渡さない”とか言ってたけど、元々渚はオレのだろ、頭の回路ぜってーおかしいな。勿論、向井に渚を渡す気なんてねーし、このオレが“分かった”て渚を簡単に差し出すとでも思ってたのか?』 「いや……状況が状況だけに…あり得る…かなって…」 『あるわけないだろっ!!あったらこうして此処に居ない。だから、開けてくれよ、渚……早くおまえの顔が見たい。』 こいつはやっぱり真っ直ぐ過ぎるほど俺を想ってくれてるんだ。 久しぶりにこみ上げてくる感情に身体中が熱くなって、忘れかけていた熱を思い出す。 そして更に、 “渚”と呼ばれる度に、 “頼む”と願われる度に、 もっともっと胸の奥が熱くなってくる。 そんな魔法にかけられたようなこいつの優しい言葉に、気付いたら鍵へと手を伸ばしていた。 そして静まり返った空間にガチャッと乾いた音が響くと、すぐにドアは開けられ、 そして、 「………渚……ただいま…」 目の前には、待ち焦がれていた……愛しい人が立っていた。

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