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パンドラの箱 35
「………ごめん。渚が思ってるようなことじゃないんだ。」
「じゃあなんだよ!どうして……触れて…くれないんだ…どうして…いつもみたいに…」
────キスしてくれないんだ
下を向き唇を強く噛みしめ泣きそうになるのを必死に堪え、伝えることが出来ない気持ちを心の中で呟く。
「……なぁ、いつもみたいに…なに?」
そんな俺に降ってきた橘の声…それは、さっきと違って少し柔らかい声色に変化していた。
それでも返事をしない俺に、なぁと更に催促してきたけど……
あんなこと恥ずかしくて口に出来るわけない。
ましてやこんな女みてーなウザい思考…自分でも情けなくなる。
「………いや、やっぱ何でも…ない。」
「渚……こっち向いて?」
「やだ……」
「……全く…おまえは。じゃあ、そのままでいいからオレの話聞けよ。」
そう言って、俺の右手を取り近くのソファーへと座らせ隣には橘が微妙な距離を開けて座った。
「まず、おまえのその勘違いしてる思考なんとかしろ。さっきから言ってるようにオレは、渚を嫌いになったわけじゃないし、めんどくせーとか思ったわけじゃない。おまえは、オレのため息とキス一つしないのでそう思ったんだろ?」
「…っ…おまっ、気づいてたなら俺に言わせようとすんなよ!!」
思わず顔を上げて反論してしまったけどそれも計算のうちだったのか、
「やっと顔上げてくれた。」
「おおおいっ…!!」
結局こうなることが決まってたかのように、橘は俺の顔を見て微笑んでいた。
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