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パンドラの箱 39

首筋に歯を立てながら短く息を吐いてそこを強く吸い上げられる。 耳の付け根のすぐ下……そこにキスマークが存在しているんだろう。 それは、向井が付けた俺たちがしてしまった過ちを証明すかのような印。 その場所に橘は何度も何度も痕を付ける。 赤く色濃く、色付くように。 「…ッ……」 「痛いか?」 返事を待つことなくすぐにまた首筋に顔を寄せチクリと針で刺されたような痛みが再び俺を襲う。 そして俺の胸もその度に痛み、苦しくなる。 「あぁ……でも、痛い…より感じるか…渚ココ弱いもんな。」 低く温度が感じらない声色でそう言われ、また強く噛まれ吸い上げられる。 「……ッ…痛っ」 「痛いだろ?オレだって痛いよ、わかるよな?それに、オレの付けた痕になるまで噛むからな……当然だろっ。」 あからさまに感じる嫉妬心。 だけど、何もなかったかのような普通の顔をされるよりよっぽどいい。 もっと怒って、そこに永遠に痕が残るくらいのモノを残してくれていいとさえ俺は思った。 だっておまえは、大人過ぎるんだよ────色んなことに。 「……もっと強く噛んでいいから…もっと、怒って。」 「………なぎ…さ…?」 多分こいつは家柄もあってか小さい時から特殊な世界で育って、ましてや一人っ子で今まで色んな大人の事情ってやつに振り回されてきたんじゃないだろうか。 俺様で我が儘だけど、俺みたいな一般庶民に比べたら理不尽に我慢を強いられることが多かったんじゃないだろうか。 今回、俺に何も相談せずに海外に行ったことも、そんな何かが絡んでのことなのかなって今ならそんな風に思える。 だから、俺の前でくらいは強がったり我慢してほしくない。 「俺は、橘が怒るようなことをしたんだ。だから、今の行為みたいに感情をさらけ出して怒ってくれていいんだよ。」 「おまえ………」 「殴ってもいい。冷たい言葉で罵ってもいい。気が済むまでそこ噛んでいいから。だから、俺の前では我慢してほしくないんだ。俺にだけは……」

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