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パンドラの箱 40
そんな俺にさっきまで冷たい目で見つめていた橘が少し驚いた顔をしたかと思うと、次第に穏やかな表情へと変化していく。
「しないよ、そんなこと。」
「だって、俺はっ……」
「渚の気持ちはよくわかる。けど、そんなことがしたいわけじゃない。」
「でも、俺だっておまえの役に立ちたい」
「渚は十分オレの役に立ってるよ」
「そんなこと……」
「目に見える何かじゃない。オレの気持ちがいつも穏やかでいられるのは渚がいるから。だから、向井とのことは腹立たしいけど渚の顔見たらどうでもよくなったのが本音。でもありがとな。つか……おまえ、オレと離れてる間に大人になったな。まぁ、オレより年上だもんな。」
「え……?」
「渚、誕生日おめでとう。
な?今日でオレより年上だろ?」
そう言いながらクスリと笑う橘は凄く優しい目
をしていた。
「そっ…か。ありがとう。」
「直接言えて良かった。こんな形であれ、“誕生日には帰りたい”って毎日願った甲斐あるな。」
願い……
ふとあのオルゴールの曲を思い出す。
「あれ。」
「は?」
「あのオルゴールの曲。“星に願いを”だろ?」
指差す先にあるテーブル上のオルゴール。
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