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海より深く 17

繋がっているのに…… 募る切なさ。 突き上げられる度に漏れる俺の喘ぎ声。 それと俺が橘の名前を時々口にする以外は静かな室内。 橘は一切何も言わない こんな気持ちのまま繋がっていても何も嬉しくない。 やっぱり、顔を見ながら言葉を交わしたい。 だから、 俺は……… 身体を揺さぶられている中、目隠しされているネクタイに気付いたら必死に手を伸ばしていた。 ………あれほどダメだと言われたのに。 「…ッ…んッ…橘が…何も言ってくれない…なら、自分の目で…ッ…確かめるから」 そして俺はきつく結ばれた目隠しを勢いよく取ると──── 「なっ…ぎさ、やめろっ!」 橘の焦った声が降ってきて、それと同時に視界がパッとひらけたけど、眩しさにすぐには目が開けれなかった。 そして数秒そのまま目を瞑ったままでいた俺に、 「そのまま目を開けるんじゃねーよ。」 橘は往生際が悪く命令してくる。 誰が…言うことなんか聞くかっつーの! 「わかったなんて…ッ…言うわけねーだろ…」 今更言うこと聞く気なんてないから、明るさに目が慣れてきた俺は、そう文句を吐き捨てながらガッと両目を見開いた。 「……………え…?…たち…ばな?」 「だから……取ったらダメだってあれほど言ったのに。」 全ての動きが止まり、蛍光灯に照らされた橘の表情、それはその明るさによって更にくっきりと浮かび上がっていて、 「…な…んで……」 その顔は、ありえないくらい、 苦しそうな顔で、 その目は、とても寂しそうに俺を見下ろしていた────

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