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海より深く 21

どれくらい意識を失っていたのか、気付いたらそのまま深い眠りについてしまっていた俺。 「……ッ……痛っ」 そんな身体の激痛で目覚めると、久しぶりに全身がバキバキと悲鳴をあげていて、寝返りもままならない。 それに、意識を失う前あんなに汗ばんでいた身体もきれいに拭かれ、さらさらの素肌にまとわりつくシーツが時折ひんやりとして気持ちがいい。 俺、あのまま眠っちまったんだ…… 何時なんだろう…今…… 痛む身体を無理矢理動かしぼんやりした頭で室内を見回すけど、時計は愚か薄暗くてどこに何があるか分からない状態で、 とりあえず、なんか飲み物欲しいから起き上がるか。 そう思って、身体を起き上がらせようと手を突っ張ってある異変に気付く。 あれ…? 「たち…ばな?」 隣で一緒に寝ているはずだとばかり思っていた橘が居ない。 薄暗い室内に響く俺のか細い声に返事が来ることなく、すぐに静寂が訪れた。 トイレとかか? まぁ、そのうち戻ってくるかな。 そう思ってしばらく待ってみたけど全く戻る気配はなく、そしてまたあることに気付く。

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