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海より深く 22

そう言えば、リビングからもキッチンからも何にも音がしない…よな。 どっか出掛けたのか? こんな時間に? って、いったい今何時なんだ?! 言い知れぬ不安が過って、身体の痛さなんてかまわずにベッドから飛び起き、寝室のドアを開いてリビングへ向かった。 もしかしたら近くのコンビニに行ってるだけかもしれない。 だから、そんな大げさに心配しなくても… ……なんて思う反面、俺を残して居なくなったあの日、あの日も突然だったから不安は膨れ上がるばかりで、 “また一人ぼっちにされるのか” “またあの色のない日々を送るしかないのか” そんな悪い方ばかりに考えが浮かんで、次第に気持ちは沈むばかり。 そして、なんとかリビングにたどり着き、電気を付け中に入る。 でも、やっぱり橘はどこにも居なくて…… 「………え……5時…」 誰も居ない静かな室内を見渡し、壁に掛かる時計を見ると朝の5時になるところで、予想以上に眠っていたことに少し驚く。 そして、ふと視線の先のテーブルに置かれた俺の携帯を見つけ、嫌な予感と共に拾い上げ開くと、 その予感は的中していた。 「………ちょっと待てよ、まさか……」

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