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海より深く 23
そこには昨夜遅くに向井からの着信があったことを知らせる表示が。
それは通話時間まできっちり残っていて……
この時間俺は意識を手放していて眠りこけていたから、そもそもこんな着信は知らないし、通話なんて出来るわけがない。
じゃあ、橘……か?
でもどうして…と思うには理由が少なすぎるくらい、きっと橘にとっては好都合だったはず。
じゃあ、橘が今居ないのって……
焦る気持ちを落ち着かせ、橘の携帯番号を表示させると発信ボタンを押した。
出てくれ。
祈るような気持ちで繰り返される呼び出し音に耳をすます。
『………もしもし、』
「橘?おまえっ、どこに居るんだよ!」
『……ごめん。事が済んだら戻るからおとなしく待っててくれ。』
やっと繋がって聞こえてきた橘の声は思ったより落ち着いているようで、だけど返事に関しては案の定と言うかやっぱりと言うような言葉が返されたもんだから、俺も一気に頭に血がのぼってしまい無意識に声を荒げてしまった。
つーか、“事が済む”ってなんだよ!
嫌な予感しまくりなんだけど!
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