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海より深く 25

* モヤモヤ、イライラする気持ちをもてあましているくらいならと、俺はとりあえずマンションを飛び出した。 さっきマンションを出る前に向井の携帯にかけたら案の定留守電だったし、行く宛も正直分からない。 だけど、じっとしてられなかったんだ。 「……ツ……いツ……」 焦ってるつもりはないのに、さっき玄関のドアを開ける時挟めてしまった指先がジリジリと痛む。 たく……どんだけ余裕ねーんだよ、俺。 そう吐き捨てながら血が滲む指先をひと舐めすると鉄の鈍い味がした。 「あーもーどこに居るんだよ。こんな朝っぱらじゃ学校も開いてねーし。……たくっ。」 指は痛てーし、身体中はバキバキいってるし、胸騒ぎはするし、最悪だ。 朝靄がかかる外を悪態を吐きながらひたすら歩く。 だけど、歩き出すと腰に一層響いて橘に言われたように身体はキツイ。 マジどうすっかな…… なんて、痛む腰を擦りながら思っていると、少し先に見えたチャリに乗ってるやつの横顔が向井に似ていて、 「向井っ!!」 いちかばちで叫んでみた。 次の瞬間、キーッ!と言う音が朝方の静けさの中で響くと、チャリが止まりそいつがこっちに振り向くのが見える。 すると、俺を認識すると目を見開いて心底驚いた顔をした向井と目が合った。 やっぱり向井だ。 つか、もしかして今から橘と……

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