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海より深く 26

とりあえず逃げないように、そこで待ってろと叫び向井のとこまで小走りで向かった。 「……はぁ…はぁ…む、向井」 「…………相原…どうして…」 「おまえ、今からどこ行くんだ?」 「………え………」 「橘に会うんだろ?俺も一緒に行く、連れてけ!」 「あい……ちょっ、待っ…!」 有無を言われせぬ速さでさっさとチャリの後ろに乗り込むと早くと促す。 「あの……さ、相原ちょっと待てよ。おまえ、俺のこと…怒ってるんじゃ…」 「は?」 この現状にいっぱいいっぱいですっかり忘れてたけど… そうだった…… 俺、向井をラブホに残して帰って来ちまったうえに… 「メールも返事してくれなかったし…」 メール……そ、そうだった。 「……うん、いや…それは…」 そんなことすっかり忘れてたっつーの。 一気に気まずくなって、無言になってしまった俺に、向井は静かに話を続けた。 「……俺、あれから冷静になったら急に後悔し始めて…まぁ、すぐに許してもらえないと思ってたからメールしたんだ。案の定返事なかったし、週明け気まずいままもイヤだったから、一先ずちゃんと謝ろうって、夜中電話したら……」 「………橘が、出た」 「そう。で、まさかあいつが出るなんて思ってなかったから……俺……」 なんと言うタイミングの良さなのか悪さなのか。 まぁ、向井もそりゃビックリするだろうよ。 そしてそこまで話していた向井が急に言葉を詰まらせたかと思うと、次の瞬間、俺を乗せたチャリが勢いよく動き出した。

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