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海より深く 29

向井の告白にどうしていいのか分からず、ただ無言で立ち尽くすだけの俺。 向井と花火に行ったあたりから、ひたすら“好き”だと言われてるからいい加減慣れるのかと思いきや…そんな訳はない。 だってこんなに好き好き言われたことなんて橘と向井くらいで、今まで付き合った女の子にだってそんなに言われたことない! そんな完全にポカーン状態の俺を横目に隣のこいつときたら…… 「…………で?」 ベンチに座ったままの橘は、特に表情も変えずに一言それだけ言うとまた無言になってしまった。 「で?…じゃなくて、相原のこと、俺にはあんたが本気だなんて到底思えないんだよ。どうせ飽きたら今まで付き合った女みたいに簡単に捨てるんだろ?そんな奴に親友として渡せるわけない。」 「………捨てる」 「そう。どうせ気まぐれでちょっかい出してるだけじゃんか。」 「おぃ、渚。」 「な、なに……?!」 「だってさ」 「う……うん…ん?!」 足を組み頬杖をついたまま、顔だけ俺の方を向いてめんどくさそうに橘は話を振ってくる。 つーか、俺に振られてもどう返事したらいいかわかんねーし!! 俺どうしたらいいんだよ、マジでこわい…… 「………渚はさ、オレがそんな男じゃねーことくらい知ってるよな?」 「う…うん……いちお…う…」 「はぁ?一応?オレがどれだけ本気かこいつに渚の口から言え!」 「なっ、意味わかんねー!何で俺が?!」 いくら俺様だからって、何で俺が言わなきゃなんねーんだよ!

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