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海より深く 35
「橘っ!おまえ殴るとかやり過ぎだろっ!」
「うるせーぞっ渚!」
いくら俺が好きだからと言っても殴るなんていいわけない。
だけど橘は俺のことになると余裕がなくなることも知ってるから、こうなることも想定内でもあった。
でも、
「やっぱりおまえが悪い!向井に謝れっ!!」
いざ目の当たりにしてしまうと橘の行為はやっぱり許せない。
「はぁ?なんでオレが謝んなきゃなんねーんだよ!謝るのは向井だろ!オレのモノに手出しやがって殴りたくもなんだろっ!」
俺が絡むとなんでもかんでも過剰に反応してしまうこいつの性格…まさか向井にまで向けられるとは思ってなかったから、余計に俺も頭に血がのぼって要らぬ言葉を吐いてしまう。
「……おまえ、いい加減その自分中心に物事考えるのやめろよ!それに、俺はおまえの所有物じゃないっ!」
「渚っ…おまえ……」
「お、おい、相原……」
「いくら俺が大事だからってしていいことと悪いことくらい分かるはずだろ!そんな自分勝手な橘なんか……嫌いだ!」
素直になれない性格な上に単純だから、頭に血がのぼったままの俺は気付いたらとんでもないことを口にしてしまっていた。
「………そうか。そんなにオレが嫌いか。」
「ちょっと…二人とも落ち着けって。」
緊迫した空気の中、俺と橘は引くに引けずに事態は悪化するばかりで、そんな俺たちを心配そうに見つめる向井と一瞬目が合った。
なんだってこうも上手くいかないんだ!
なんでいつも………
向井の困り果てた顔を見るたびにモヤモヤイライラが募っていく。
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