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海より深く 36
「わかった、もういいっ!!そんなに親友の方が大事なら勝手にしろっ!!」
「あーもうっ!!何わけわかんねーこと言ってんだよっ!てめーの方が勝手にしろっ!向井行くぞっ!!」
本当に頭にきて、向井の腕を掴んで歩きだそうとした時それをなぜか拒まれてしまった。
「相原、ちょっと待て。」
「なんだよ。」
「もう分かったから。もう…十分分かった。」
「……何が」
俯いたままの向井の表情は見えないけど、時々声が震えてるようで、それだけでどんな気持ちか分かってしまう。
「俺、さっきの二人の空気で思い知らされたんだ。だけど、認めたくなくて悔しくて相原にキスした。だけど、もっと思い知らされて……」
「…………向井」
「………やっぱりさ、俺じゃないんだよな。だから、二人とも喧嘩するなよ。」
苦しそうな声。
向井のことだって大事だからこそ、何をどう言ってあげたらいいか言葉が見つからない。
「────そうですよ、喧嘩なんて……」
そんなどうしようもない俺に聞こえてきた優しい声。
向井の気持ちを包み込むような…とても優しいその声がする方へとゆっくりと視線を移すと、
そこには意外な人物が立っていた。
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