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惑わすほどに 3
『────オレは、高校を卒業したら許嫁と結婚する』
あんなに大事なことをどうして今まで黙っていたのか。
結婚相手がいるのにどうして俺を……
どうして俺を好きだと言ったんだ。
どうしてあんな叶わないことなんか言ったんだ。
どうして……
頭の中で何度も繰り返される“どうして”という単語。
頭が……ズキズキする
こめかみに指先を当てて酷くなる頭の痛さに目を瞑る。
「渚……どうしたんだよ?」
どうしただと?
おまえのせいだろ、察しろよ!
「具合…悪いのか?」
「…………。」
「渚?」
そんな俺を優しく心配する声に余計に胸が苦しくなって、俺は無言で橘から背を向けてしまった。
「あのさ…なぎ……」
「いいからあっち行けよ!頭が痛いんだよ、ほっといてくれっ!!」
頭が痛いのは本当だ。
身体も熱いし、熱があるんだと思う。
それに、ずっと頭が痛かったのは多分熱のせいだろう。
だから余計ほっといて欲しいのに。
でも本当は熱のせいにして、この感情を誤魔化そうとしているだけ。
だって…これ以上橘の顔を見ていたらもっと酷いことを言ってしまいそうなんだ。
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