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惑わすほどに 5
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「坊っちゃん…渚様にはきちんと…お伝えしたのですか?」
「……こんな状態で…出来るわけねーだろ?」
「しかし……」
そんな会話が聞こえて目が覚めた。
重たい目蓋をこじ開けるとドアが開いた状態で、橘と廣瀬さんが話しているのが見える。
「渚様がお目覚めになったらきちんと……」
「んなこと分かってるっつーのっ!!オレだって、アイツには悪いから早く言わなきゃいけねーのは分かってんだよっ!!」
「……そうですね、なるべくお早めに。渚様がお目覚めになる前に爺は必要な物を買って参りますので、お目覚めになったら……お願いします。」
「爺に言われなくても分かってるっつーの。あ、一緒にアレも買ってきてくれ。」
「アレ……といいますと…アレ、ですか?」
「そうだよ。」
「……かしこまりました。」
そこで会話は終わって、ほどなくして玄関の方でバタンッとドアが閉まる音がした。
“アレ”って……なんだろう。
気になっている間にも橘がこっちに歩いてくる気配がして…俺は急いで寝たふりをしていると、俺の枕元まで来た橘が小さく息を吐いたのが聞こえた。
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