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惑わすほどに 8

『………優人さん、帰って来てたならどうして知らせてくれなかったんですか?』 『………ごめん。こはるちゃんのとこには後で行こうと思ってたから。』 こはるちゃん…か。 そうため息と一緒に吐き捨て、リビングに続くドアに手を掛ける。 リビングに入ると立ったままの二人はこっちに視線を流し、橘に至っては心底びっくりした顔をされた。 そして許嫁とやらのこはるちゃん…思った以上に可愛らしい女の子で、くりっとした目をしていて、ふわっとカールした巻き髪が似合ういわゆる…お嬢様って感じの子。 それに、なんとなく俺たちより年下っぽいあどけなさを感じた。 「………なっ渚?!起きて大丈夫なのかっ?!」 「…………うん。」 別に、二人が話してる今帰ろうとしなくてもいいのに…俺って性格悪いよな。 そんなことを思いながら、二人に視線を向けることなく手短に返事をする。 「優人さん…こちらの方は…?」 「こいつは……オレの────」 「ただの友達です」 なんか、もう…色々めんどくさくなって橘の言葉を遮るようにそう吐き捨て玄関に向かおうとしたら、こはるちゃんに呼び止められた。 「あっ、あの…!はじめまして…私、伊集院 小春と申します。小さい春と書いて小春て読みます!優人さんのお友達がいらっしゃるのにお邪魔してしまって…すみませんでした!」 そして何故か小春ちゃんに自己紹介されてしまった。

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