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惑わすほどに 10
「……優人さんっ、い…いいんですか?!」
「────ああ」
そして、ドアが閉まる直前に聞こえてきた二人の会話。
それで決定的になる。
橘は、俺を追っては来ないんだって…こと。
当たり前だよな。
それだけの態度をしてしまったんだ…突き放されるのなんて当然だ。
*
「結局、ここか……」
こんな気持ちでうちに帰ってもろくなことがないと思ってうち以外で選んだ場所は……結局、学校だった。
今日は祝日だし、もうすぐ夕方ということでグランドで部活動してる奴らもそんないないし、どっちかというとひっそりしてる。
この分なら校舎の中だってきっと人はそんなにいないはずだ。
案の定、中に入ってみるとわりとひっそりとしていて今の俺には丁度よかった。
そして、無意識に足はある場所へと導かれるように歩みを進めていると、ちょうど渡り廊下に差し掛かったあたりで向こうから誰か歩いて来るのが視界に入った。
あっちの校舎に用がある奴なんて…しかも休みなのに。
夕焼けが射し込む窓が反射してそれが誰か分からない。
私服だし…なんか、めんどくせーな。
先生とかだったら文句言われるのもウザいから引き返そうとしたら、
「おいっ、逃げるなよ!」
そいつは俺をそう乱暴に呼び止めてきた。
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