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惑わすほどに 11

「俺の顔見て逃げ出すとか、俺も随分とおまえに嫌われたもんだなぁ…」 続けて聞こえてきたその声で、俺の機嫌は更に悪くなっていく。 「先生…窓から射し込む夕日のせいで誰かなんて分かんなかっただけで、別に先生だから逃げたわけじゃないんですけど。」 「そう言うのを屁理屈って言うんだよ。ま、俺からは渚のことよーく見えてたけど。」 「ったく…だったら声かけたらいいじゃないですか。」 「なんだ、今日はえらくご機嫌斜めだな。しかも学校なんかにどうしたんだよ?」 そう言って、白衣姿の望月が近付いてくると手には何か書類みたいなモノを持ってるのが見えた。 「俺は…ちょっと…忘れ物取りに来ただけ…です。先生こそ休みなのに仕事なんですか?」 「……ああ、俺は仕事。ここのところプライベートが何かと忙しくて、仕事溜まってたから仕方なく休日出勤。」 「彼女とデートに忙しい…ってわけですか。」 皮肉たっぷりに言った後、えらいことを思い出した。“彼女”じゃなくて“彼氏”じゃん。 彼氏…ほっしーだったんだっけ。 自分で言ったくせに顔が熱くなってしまった。 「はぁ?……なんだそれ。つか、顔真っ赤だぞ。そんな気になるのか?」 「いっ…いや…違くて…」 「また……そんな顔してるとキスするぞ?橘も今はいないし、一回くらいシたってバレないだろうしなぁ。」 「橘なんか……」 どうでもいい。 どうだっていいけど、望月にはほっしーがいるからバレるバレないの前にダメだろ、そんなことしたら。 そんなことを思っていたら望月の顔が目の前に迫ってて、だんだんと顔が近付いてくるのが視界いっぱに広がった。

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