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惑わすほどに 13
「ふーん。で?」
「で?って何ですか。」
「で、渚はそれでいいのかよ。」
「いいも悪いも、許嫁ですよ?結婚する事が決まってるのにどうにもならないじゃないですか。」
どうにもならないわけじゃないかもしれないけど、その可能性は極めて低い。
ましてや男の俺に何が出来るわけでもない。
なのに、こんな状況の中でも望月は相変わらずマイペースだ。
「でも、まだ夫婦ではない。」
「当たり前じゃないですか。未成年ですよ?!」
「だったら諦めるの早くねーか?」
「は?絶対、無理ですよ。だって…俺…」
「男だし…とか言い出す気じゃねーよな?」
「なん…で…」
「図星か。まぁ、俺も男……だから、分かる。まぁ、男同士って大変だよな…。好きだけじゃどうにもならない問題は男女より多いし、結婚なんてこの日本では正式には出来ないし…ましてや金持ちで跡取りときたらな…そりゃそう思うのも分かるわ。」
「先生……?」
視線を窓から外すことなく、淡々とそんなことを急に言い出した望月に少しだけ違和感を感じた。
望月は何が言いたいんだろう……
「“絶対”なんて……ないんだよ。」
そしてそのまま口にした一言は、誰に言うでもないよな……独り言のような、そんな風な言い方だった。
「え?なんの…ことですか?」
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