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惑わすほどに 17

「ったく…おまえらには世話がやけるよ。」 「別に…ほっといてくれたって……」 「何か言ったか?」 「いや……」 「まぁ、橘と仲良くしろよ。俺もおまえらが別れるとかになったら面倒なことになるんだからさ。」 「面倒って…なんですか?」 「そうだなぁ……おまえらのことを、自分のことのように心配する奴がいるってことだ。」 「先生そんないい人でしたっけ?」 「俺じゃねーよ。とにかく、くれぐれも別れるとかは勘弁してくれ。じゃーなっ。」 なんだか、結局望月が何のことを言ってるんだかよく分かんねーままなんだけど。 だけど、そんな俺のことなんかお構い無しとばかりに、持っていた書類で俺の頭を軽く叩くと、すたすたと歩き出していた。 「ちょっ、先生っ!」 「もう少しは職員室居るから……頑張れよ!」 そして振り向くことなく、望月はそんな捨て台詞を残し、白衣をひらひらさせながら去って行った。 頑張れよじゃねーよ。 頑張れなんて言われたって…… 俺だけが頑張ったって…… アイツが──── 橘が最終的には決めることだ。 家を取るのか、俺を…取るのか。 大袈裟かもしれないけど、最終的にはその二択だろ。

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