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惑わすほどに 18

……なんか、 今さらだけど──── 「好きに……ならなきゃ…よかった…のかも…な…」 * 気分は相変わらず最悪で、重い足どりでゆっくりと静かな廊下を歩きながら、俺はふと、あることに気付く。 今では、決して間違えることのないその場所までの道順。 行ったこともなかったその場所が、今では当たり前のように毎週通うようになって、多分俺の日常の一部。 だけど、初めてそこに行った時は2回も道順を間違えて、辿り着いた時にはアイツに怒られた。 『おせーよ!』 初めて生徒会室に行って、橘はそう不機嫌に俺を出迎えたことが、なんだかすごい昔のことのように思える。 あの時から比べると、俺たち…ずげー変わったな。 俺はアイツが大嫌いで、そもそも橘なんて奴会ったことも喋ったこともなかったのに。 大嫌い、 だったのに…… アイツなんか、大嫌いだったのに。 そんなことを考えてるうちに、いつの間にかここに辿り着いちまった俺は、 「はぁ……」 大きなため息を吐きながら、いつものようにドアを開け中に入った。 そして、薄暗い室内から聞こえて来たのは、 「おせーよ!」 「なっ…んで…」 ……あの日と同じように不機嫌そうに文句を言う、 橘の声だった。

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