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惑わすほどに 19
まさか橘が学校に…しかも生徒会室にいるなんて。
だって俺がマンションを飛び出した時は追い掛ける素振りも見せなかったし…それに小春ちゃんは…?
頭の中が混乱して上手く言葉に出来ない。
「なんで…どうして…」
「なんで?その言葉、渚にそっくりそのまま返してやるよ。」
「……え」
「なんで、マンション出て行った?」
「…………。」
言葉が出てこない。
俺は、何を言えば……
「まったく……」
大きなため息と共に窓際に立っていた橘が俺の目の前にゆっくりと歩いてきた。そして目の前に来たことで薄暗くて気付かなかったことに気付く。
「つーかっ、なんで…制服。」
目の前の橘は何故か制服姿で、ネクタイまでご丁寧にしっかり絞めてる。
「それはまた後で話す。それよりオレの質問に答えろっ。どうしてだ?」
「………いや、だって…居たく…なかった…」
「は?」
「あの子、許嫁だろ?」
「小春ちゃんのことか。確かに…オレの許嫁だ。」
「だったら…俺なんか居たらお邪魔じゃねーかっ。」
現実を見せつけられて、逃げ出す俺も弱いけど、俺にはショックが大き過ぎたんだ。
「お邪魔か。渚は、オレと小春ちゃんがどう見えた?」
「どうって……許嫁だから…それなりの仲かなって…」
「小春ちゃんは、確かに許嫁だけど別に親しいわけでもないし、もちろん恋人でもない。許嫁なんて親同士が決めただけで、俺たちはまだその段階にもいってねーんだよ。」
でも、いずれ結婚するんだからそれなりの仲になるんだろ?
だったら俺に構う前に小春ちゃんの方大切にしたら?
なんてことを言うのもウザいから、口に出す前にその全てを飲み込んだ。
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