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惑わすほどに 20
そして代わりに、本音とは違う言葉を口にする……
「それ中途半端過ぎるだろ。俺にだってそうだ。そうやって振り回すのいい加減にしろよっ!」
「………渚…」
「俺は結局おまえにずっと振り回され続けてていい加減疲れたんだよ。小春ちゃんだって…おまえがフラフラして俺なんかにちょっかい出してるの知ったら嫌だろ!」
さっき望月に言われたばっかりなのに、俺は何を言ってんだろ。
振り回されてると感じているのは嘘じゃねーけど…こんな言い方をすれば、俺と橘の関係を否定してるようにしか聞こえない。
だけど、やっぱり…望月が言うようにはいかないんだよ。
『好きなら突き進め』
そんなこと、したって無意味だ。
「中途半端…か。まぁ、そうだよな。渚、ごめんな。許嫁のこと隠してたのは悪かったと思ってる。でも打ち明けたら別れるとか言い出したろ?」
「当たり前だろっ!許嫁がいるのにこんな関係おかしいだろ!」
「じゃあ、許嫁の存在を知った今は、俺と別れたいと思ってるってことだよな?」
「………それは、」
「違うのか?」
本音は、
違う。
だけど、
「別れた…方が…いい…と、思う。」
そう言うしかない。
俺には、
それしか………言えない。
そして、少しの沈黙のあと橘が一言、「そうか…」と呟いたのが聞こえると、俺の胸はずきりと痛んだ。
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