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惑わすほどに 21

“そうか”と言われ、俺の頭の中は真っ白で、胸の痛みは増すばり。呼吸だってうまく出来なくて、思っていた以上にダメージが大きかった。 きっと、これで俺たちの関係は終わるんだ。 橘から次は何を言われるんだろうと、思えば思うほど恐くて…無意識に、俺は俯きギュッと目を閉じてしまった。 “絶体絶命”って四語時熟語、こう言う時に使うのかな…なんて、客観的な意識を巡らしてみる。 なにをどうあがいてもこの状況は変わらないから使い方は合っているはずだ。 今はそんなことどうでもういいのに何かに意識を逸らしてないと感情が破壊しそうで…… ……なんか、目を閉じているのに泣きそうだ。 もうっ、ホントに嫌だっ。ホントに…辛い。 目蓋が震え、目に涙が溜まっていく感覚と短くなる呼吸。 俺は…… 俺は…… そして、 「俺たち……別れ…よう。」 橘の口から言われるくらいなら、自分から言った方がよっぽどいい……と、一生言いたくなかった言葉を口にした。 弱い俺が自分を保つことが出来る唯一はこれくらい。 だから、自分から言ったのに…… なのに、橘が口にしたのは、 「ちょっと待て。じゃあ、小春ちゃんとの許嫁が解消されれば、そんなことも思わなくなるんだよな?」 は? こいつは何を言ってるんだ? あまりにも予想外の展開に、思わず顔を上げてしまった。

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