このまま目を瞑って頷けばよかったのかもしれない。 でも、 強く、抱きしめられながら思ってしまった。 それは、 このまま流されていいのか？ 若気の至りでは済まされないことはバカな俺でも分かる。 だって、もうすでに小春ちゃんを傷付けてるんだ、やっぱりいいわけがない。 「……あのさ…やっぱり俺は…」 「小春ちゃんなら大丈夫だ。」 「え？」 なのに、橘が口にしたのは意外な結果でちょっと面食らってしまった。 「あの子、俺たちの仲見抜いてた。」 見抜いてた？ あの一瞬でか？ そんな鋭い子には見えなかったけど… 「渚がオレを見る目が友達とはちょっと違う雰囲気だったって。だから、オレが打ち明けた時、やっぱりって言われたよ。」 「小春ちゃんおっとりしてそうなのに……」 「まぁ、世間知らずなとこあるけど、その辺は空気読める子だから…おぃ、渚？どうした？」 「別に……」 さっきも思ったけど、小春ちゃんを“子”とか言ってるのがなんかムカついく。 「おまえは全く…わかりやすいなぁ。ヤキモチやくなよ、誰が一番かなんて今さらだろ？」 「し…しらねーし。」 こんな性格だから素直になれるわけもないし、俺は橘の腕の中で無駄な抵抗を続けた。 そんな俺を、愛しい眼差しで覗き込む橘と目が合う。 そして、橘は…そんなに不安なら一番だと言うことをこれから証明してやると言い出した。 「証明なんか…」 「何か証があれば渚も悩まなくて済むんだろ？まぁ、もうほぼ済んだからこれから話すよ。全て……話す。」