「……渚とこの先もずっと一緒にいたいんだよ…ただ、それだけなんだ。だから、そのためにオレは必死にシンガポールで結果を出そうとしてたんだ。」 「…でもっ、俺とおまえとは住む世界が違い過ぎる気が…」 「なに言ってんだよ……」 「俺には……」 やっぱり荷が重すぎる。 そう言う前に橘が俺の口を塞ぎ…数秒だけ触れた唇は直ぐに離れていった。 「……ッ……んッ…」 「オレはオレだ。別に社長になろうと渚を好きなオレは変わらない…何年、何十年経っても。」 まだ唇が触れ合うくらいの至近距離からそんなことを言われ、俺はなんて言ったらいいか、言葉が出てこない。 嬉しいのか…… 嬉しくないのか…… 正直わからないよ。 「言ったろ？渚が初恋だって。本気で惚れたのは渚だけだって。だから、誰にも文句を言わせない為に約束の条件を飲んで、シンガポールに行ったんだ。」 だけど、確かなのは…… そこまで俺のためしてくれる男が目の前にいてくれる…… 「でも、正直…旅立つ前はマジで辛かった。自分で決めたこととは言え、渚を残して行きたくなくて…直前で止めようかとも思った。でも、やっと見つけたオレの居場所だから、ここで投げ出すわけにはいかねーって。」 それに、 “居場所────” だから、あの時…泣いていたんだ… だから、あの時──── 『たとえ……離れ離れになったとしても────…』 そう苦しそうに言っていたんだ……