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惑わすほどに 28

「ごめん。ごめんな……」 「俺………寂しかった。すげー寂しくて、寂しくて、こんなにおまえが好きだったんだって自覚したらもっと寂しくなって…お、れ…」 橘が言う“将来”にどれだけの意味を持つのか馬鹿な俺には分からない。 だから、俺は将来より今を優先して一緒にいたかった。 不安定な関係だから、いつも惑わされてる俺だから、橘がそこまで言う“将来”に付加価値を見出だすことが出来なかったんだ。 「渚、もう一人にしないから。どこにも行かないから信じてくれ。」 信じたくても信じられない。 それだけ俺にとっては大きなことだったんだ。 「………信じることは……出来ない」 だから、今の気持ちを正直に口にした。 すると、無言のまま橘は俺の身体を少し離すと、自分のポケットからあるもの取り出し俺に渡してきた。 「これって………」 「あの箱の中に忘れてあったから持ってきた。望月か?」 「………うん。帰ってきたら、俺から渡してやれって。」 「じゃあ、付けて。渚の手で…ここに。」 そう言って指差す先は胸元のポケット部分で──── 生徒会会長のバッチを俺に付けさせるためにこいつは……

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