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惑わすほどに 31
「未来とか将来とか意味わかんねーよ。そんなに今より大事な意味が……」
……わからない。
俺たちは別にただの恋人であって将来を誓い合ったわけでもないのに。
誓い……?
あれ……
ちょっと待てよ。
あの時言った……
んなわけねーよな。
そんなはずない。
「渚……バッチのお返ししたいから目瞑って?」
まさか……な?
あんなの冗談だろ?
半信半疑で頭いっぱいの俺はとりあえず言われるがまま目を瞑る。
そして、俺の唇に一瞬だけ宿った橘の唇の温もり。
それはすぐに消え、その代わりにある場所に感じた冷たさ……
そこに感じる重みに、俺は思わず目を開けてしまった。
「あ……あ、あの…」
「なんだ、もう開けちまったのか。まぁ、いいよ。」
「ちょっ…これっ…どう言うことだよ!」
まさかって思ったことが確信に変わる瞬間。
俺は…頭の中が一気に真っ白になった。
だって…だって…
これって……
「色々と予定は狂っちまったけど……あの時の返事をしてほしい。オレが言った……」
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