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惑わすほどに 32

「あの時の返事って…まさかあれじゃ…ねーよな?」 「オレが帰るまでに返事考えとけって言っただろ?まさか忘れてたわけじゃねーよな?」 嘘だろ、あんなの信じるほうが…… 「だって、あんな…冗談だろ?!」 「冗談?あの時だってオレはマジだって言ったよな?それから気持ちは何も変わってない。」 目の前の橘は言葉通りにすげーマジな顔で俺にそう吐き捨てた。 「だって…そんな俺たち男だし…無理だろ?」 「無理かどうかは自分たち次第だろ。渚が望むならいくらでも証を作ってやる。これだって立派な証だろ?」 そう言って俺の右手を握られた。 そして語られる真実…… 「オレは渚とずっと一緒にいたいから今を犠牲にして両親を説得した。まぁ、向井の一件で急遽帰国したから説得は途中だけど、仕事の成果はあげてきたから文句を言わせるつもりはない。だから家のことは心配するな。」 「心配するなって言われても」 「俺が渚を一人にしてしまったのも、小春ちゃんのこともあったし、卒業までには説得しなきゃならなかったから何も言わず動いて寂しい思いをさせてすまなかったと思ってる。でも、もう何も心配しなくていい。俺がこうして全てをかけても渚を守るから。」 「全てを……」 そんなに俺のこと…考えてくれたのか。 俺がくよくよ悩んでる間こいつは… 「じゃあ、初めからおまえは俺のためだけに動いてたって…こと?」 「そうだよ。渚と出会って好きになって、こいつだけだって思ってからずっと、今までもこれからも…ずっと、オレは渚の為だけ。渚とこの先もずっと一緒にいたいし、守りたいから守れる男になる為にしたことだ。渚は?オレと一緒にいたくない?」 いたくない?って…… そんなの…そんなの……

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