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惑わすほどに 34
「……オレももう二度と渚から離れないって約束する────この指輪に誓って。
この指輪も、今はまだ右手だけど、必ず左手に付け直してやる。そして、一生涯…渚を愛するから、だから────」
そう言って右手の薬指をなぞるように触れ、指を絡めながら…言葉を続けた。
「────だから、高校卒業して、いつか必ず……
────結婚しよう」
あの時言われた言葉と同じ。
それは右手の薬指にはまる指輪で、より一層真実さが増していった。
繋いだ手から伝わる温かさと、
橘からの想いと俺からの想い。
握り合う手から好きの気持ちが溢れそうで、そっとその手に力を込める。
そして橘が真っ直ぐ俺を見つめ、
「返事は?」
そうゆっくりと聞いてきた。
へ…へんじ……
「あの……これって…やっぱ…プ…プロポーズ……?」
「は?!バカ渚っ。やっぱ…じゃねーよ、これがプロポーズじゃなかったら何なんだ。ムードぶち壊すなよ。」
バカって……
こんな時に言わなくったって。
ムードぶち壊してんの橘じゃねーか。
「ほら、返事しろよ。」
今度はさっきと全く真逆な俺様全開の橘。
ムカつく……
けど、
俺は、やっぱりこいつじゃなきゃダメだから、
……いや、
橘 優人
じゃなきゃダメだから、
だから、ありったけの愛情を詰め込んで、
「しょーがねーから結婚…してやるよ。」
そう返事をしてやった。
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