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惑わすほどに 35

「なんか、渚らしいな。でも、そんな顔で言われてもなぁ…」 「………う、う…るせぇー!!」 男のくせに…って言う、 自覚はある。 でも仕方ないんだよ。 だって、だって、さっきから橘がすげー幸せそうな顔なんかしやがるから… それ見たら泣くだろっ!! 「もーっ!覗き込むなよ!」 「いいだろ?ちゃんと顔見せろよ。」 恥ずかしくて俯いたままでいると泣き顔を見ようと顔を近づけられる。 「ぜってーやだっ!!」 そのままいつもみたいに馬鹿にされるのかと思ったら、今日の橘はちょっと違う雰囲気で意外なことを言い出した。 「泣くなよ…こうみえて、渚の泣き顔は正直苦手なんだ。」 え?……苦手とか、キャラじゃないじゃん。 「苦手とか…橘のくせに?」 「くせに…って。オレは渚の笑顔が大好きなんだ。暴露するとそれでオレは恋に堕ちた。」 「はぁ?!マジかよ!!」 そう言えば、俺を好きになったきっかけとか知らない…つーか、前に聞いた時教えてくれなかったんだ。 「えっ、じゃあ、橘ってそんな乙女な理由で俺を…?」 「実際は他にも好きになった理由はあるけど、一番初めはそれ。つか、乙女ってなんだよ、これだって立派な理由だろ。」 「うん……まぁ。でも、俺の笑顔…っていつのタイミングだよ?それに、他の理由って?」 確か、前に教えてくれたのは入学して早々に俺を好きになったとかって、一年以上片想いしてたって、しかも初恋…と、まで言ってたよな。

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