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惑わすほどに 37

──────── ────── ──── 「へっ…へっくしゅんっ!!」 「おい、大丈夫か?そもそもおまえ花粉症だっけ?」 「ふぇっ…へっ…へっくしゅんっ…!ち、違う…今年デビューってやつ…。あーむずむずしてイライラすんなぁー!!」 「だから花見なんてやめりゃよかったのによ。」 「ばーか!!約束したろ!!でってーおまえと…みりゅって…へっくしゅんっ!」 「あぁーもう分かったから、とりあえず鼻かめって。ほら、」 「う゛……う゛ん…」 去年、俺は…恋に堕ちた。 しかも、相手は学校一のモテ男。 あ、今さらっと言ったけど、 つまり、男が男に恋をした…のだ。 世の中ありえないことも起きるもので、まさか俺が男に恋する日が来るとは思ってもみなかった。 そんな、恋愛経験が決して豊富じゃない俺がマジで好きになったのが、今隣でティッシュを差し出し苦笑いしてるこいつ────橘優人 恋に堕ちただけなら普通の恋人同士なのだが…… 「なんで指輪付けないんだよ。」 「だって…いいだろ、別に。首から下げてちゃんと毎日持ってんだから文句言うなよ。」 「たくっ…卒業したらちゃんと付けろよ?」 そう…… 去年、夏の夕暮れ時に生徒会室で橘からプロポーズされ、俺たちは近い未来必ず結婚しようと誓い合ったんだ。 あれから、橘の家のことや小春ちゃんのことも含め、現実問題平凡とはいえないけど、まぁ…幸せな日々を過ごして俺たちは高校3年になった。 そして、“来年は一緒に花見に行こう”と言った、あの日一緒に見た葉桜だった木の下で、約束通り俺たちは花見の最中だ。 花見と言ってもベンチに座り、自販機で買った飲み物片手に桜を見上げてるだけだから大したもんでもない。 でも、こうして二人で一緒に桜を見れたことがすげー嬉しいし、幸せ。 色々あったから…… ホント……色々。

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