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惑わすほどに 38
「なぁ、おい…渚!」
「え?あ、ゴメン。」
「聞いてるのか?返事は?」
「……う、うん、ちゃんと付けるよ。」
だけど、渡された指輪はあの日以来薬指から一度外した。
なんでかって?
そんなの大事過ぎるのと……まぁ、ぶっちゃけ恥ずかしいのもあって。
それに理由はもう1つ、向井のこと。
向井の気持ちを考えるとどうしても気が引けて付けられなかった。
あれからも俺とはなるべく今まで通りに接してくれてるけど、やっぱり気持ちの整理つけるのって時間はかかるだろうし、俺はずっと親友でいたかったから、向井の気持ちが落ち着くまでは指輪のことは伏せておこうって決めたんだ。
けど、最近はまた鳴ちゃんと一緒にいるところ見かけるから、出来れば元通りになれれば一番いいんだけど……うん、向井には出来れば鳴ちゃんと幸せになってもらいてーなって思う。
それに、大事過ぎっつーのは確かで、だって婚約指輪なんかそうそう貰うもんじゃねーし…浮かれて無くしでもしたら…多分、怒られるだけじゃすまない。
だから、ネックレスに通して大事に大事に持ってる。
橘には悪いと思ってるけど、あの時はそうでもしないと色々なことが一気に変化したから、俺の頭ん中が容量オーバーになりそうだったんだ。
だから、たまにちょっと寂しそうに俺の胸元の指輪に視線を移す時があるけど、「意気地無しでごめん。」て心の中でいつも謝罪する。
案の定、今も橘のそんな顔を見てしまった俺は、心の中で謝罪し出来るだけ自然に話を切り替えた。
「あ、あのさぁ…橘って花粉症とか…大丈夫なの?」
「…え?あ、……ねーよ、そんなもん。あんなのは気の持ちようだろ。気にしなきゃいいんだよ。」
「そ……そうなの?!気にしなきゃって……」
「だから────…」
「ちょっ!!スト――ップ!!ここ外!!やめろっ!!」
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