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エピローグ 1
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変わらない風景、
変わらない甘い…香り、
変わらない…────
俺たち。
~惑わすアイツは生徒会長・エピローグ~
「…────それで、あの後は大変だったよな。」
「おまえが言うなよ。あそこで一回、マンション帰って……思い出せねぇ……って、あ、もうそろそろ出ていただかないと次の……」
「うるさい。まだ大丈夫だろ、先方との約束の時間まであと1時間はある。」
「でも……」
「それに、なんでいきなり敬語になるんだよ。プライベートで二人きりの時は敬語禁止って約束だろ。」
「………たくっ。一応、今も仕事の合間だから敬語使ってんのに、おまえってやつは。まったく、もういいだろ?いくら節目とはいえ、出逢いからプロポーズまで振り返るとかどんな羞恥プレイだよ。それに、今だって取引先に向かう途中だっつーのに。おまえのことちゃんと管理しねーと俺が後で社長に怒られるんだからな?」
「別に仕事投げ出してるわけじゃないんだから大丈夫だろ。まぁでも、どうしてもって言うなら、キスしてくれたら言うこときくけど。」
「はぁ?!いい年して小学生みてーなこと言ってんなよ。次期社長が聞いて呆れるぜ。そもそも、ここだって明日全部終わった後に来ればよかったんだよ。」
「渚さ、今日が何の日か分かってんの?そして明日も。」
「………わ…わかってるよ。」
俺たちが出逢い結ばれたのがちょうど10年前。
高校二年の時、俺たちは恋に堕ちて将来を誓い合った。
そして、俺たちが当時約束した、
“毎年桜の季節になったら二人で一緒に桜を見に行こう”
というのも今年で9回目。
10年の間変わったことと言えば、二人とも年を重ねて後3年もすれば30才。
それに俺は、次期社長のこいつの秘書となり、こいつは明日、正式に社長に就任する。
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