491 / 498

エピローグ 3

秘書だって、俺は嫌だって言ったのに一緒にいたいからと毎日口説かれ、結局は俺の根気負け。 まぁ、俺も一緒にいたかったってのは同じだったから、決めた後は必死に勉強して社長…えっと、優人の親父さんに認めてもらえるように頑張ったんだ。 俺たちの関係も初めはなかなか認めてもらえなかったけど、仕事の実績をあげれば関係を公にしてもいいし、結婚もしてもいいと約束してもらえたから優人は今まですげー頑張ってきた。 で、ついに明日社長に就任するのと同時に俺たちの関係を公にする。 別に俺は無理に公にしなくてもいいって言ったんだけど、立場的に社長ともなれば縁談とかも多いし、こいつも黙ってれば容姿はいいから狙ってる女も結構いるらしく、その方が都合がいいって言われ俺もそれならと納得した。 だから、俺たちが恋人同士ってことは会社では隠してたから、関係を知るのはごく限られた人だけ。 それに俺はともかく、優人が右手でも左手でも指輪なんか付けた日には女子社員が大騒ぎで大変だろうからって今は何も付けてない…。 まぁ、こいつは今も昔も結局は注目されるような立場の人間なんだろうな。 「……あーもう、うるせーなぁ。そもそもそんな昔のこと忘れたっつーの。」 でも、性格は相変わらずこんなありさまだし、扱いづらいったらありゃしねーけど。 「まぁでも、渚はよく覚えてるよな?」 「何が?」 「高校時代のこと。」 「……そりゃ…覚えてるよ。」 覚えてるに決まってんだろ。 あんな人生が変わるような出逢いがあったんだ。 忘れるはずが……ない。 「優人は?」 まさか、忘れたはずは… 「ばーか。オレだって忘れてねーよ。渚とのことなら全部ちゃんと覚えてる。」 だよな。 ……よかった。 悪態を吐きながらも、そう言う優人の眼差しはとても優しい。 そして、続く言葉を耳元で囁かれれば…一抹の不安は嘘のように消え去った。

ともだちにシェアしよう!