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1話-①:ボーイ・ミーツ・スター
juryuiが結成されて約三ヶ月が経とうとしている。大々的にメディアが報道してくれたおかげで滑り出しは上々。もう少しでデビューシングルも発売される。曲はもちろん、天才のセンスを持つ樹李君が担当してくれて、この前デモを聞かせてもらったがあまりの凄さに耳が溶けるかと思った程だ。
発売から一週間も切れば番宣でスケジュールが埋まる。もちろん俳優が本業ではあるが、アーティストとして売れれば必然とそのうち主題歌とかも決まるだろう。
そうなればいいなーとか、一緒に樹李君とドラマなんて出来た日にはもう、国の記念日として申請してもいいかもしれない。
そんな中、社長に緊急招集がかかったのはデビューシングルが発売される前日の事だった。
「樹李の事を説得してくれ」
険しい顔でこめかみを押さえる社長に開口一番それ告げられる。対する樹李君も同じように眉を寄せ社長を睨みつける。
「僕、NG出したじゃないですか。絶叫系に乗るのだけは無理だって」
「土曜のゴールデンタイムでかなりの視聴率が期待できるバラエティの目玉企画なんだ。一回くらいは飲んでくれないか」
「これ以上しつこいと弁護士を通して訴えますよ」
「ストップ。社長も樹李も今の状況を一度説明してくれませんか」
全く話が読めないが出ている話が物騒になってきたので慌てて二人の間に入る。
「来週別のグループが出れなくなってしまったゴールデンバラエティに僕らJuryuiが代わりに打診されたんだ。でもその企画がクイズに失敗すると強制絶叫」
樹李君の口から艶めかしいため息が出る。悩んでいる姿ですらこんなに絵になるなんて流石樹李君。いやいかんいかん、樹李君の絶叫系嫌いはファンの中では教科書の一ページ目に記載されてるくらいなのだ。本人にとっては死活問題だろう。
「絶好の宣伝チャンスだって言うのに、絶叫系全般ダメな樹李が出るのを拒否してるっていう訳」
社長の言う事ももちろん分かる。今がjuryuiにとって物凄く大事な時期だと言うのも。こんなに社長が力を入れて売り出そうとしてくれてるのだ。有難い話でしかない。
俺は俳優としてもまだまだ駆け出しの位置にいるし、樹李君も一度学業専念のためと、俳優業をお休みしていて、大学院を卒業してようやく去年から再開したばかり。ここで顔が売れるのは正直俺としても嬉しい限りで。
でもそれも樹李君がダメなものはダメだ。俺にとっては一にも二にも樹李君が一番だから。
「それ以外ならなんでもやるって言ってるじゃないですか」
「プロなら何でもこなすってものだろう」
両者一歩も引かず、睨み合っていて、その場に同席しているマネージャーの篠崎さんなんて、俺の方に助けを懇願する程だ。
とりあえず手元にある企画書を手にとって目を通す。
「これって、グループやドラマチームの最年少がクイズに答えて、最年長がトロッコの上に乗るヤツですよね。失敗するか制限時間を過ぎると一段ずつ急降下するっていう……」
「そう、だから必然的に僕がトロッコの上に乗らないといけないって訳。番組的にはプレッシャーに負けた歳下の子が失敗して、それを先輩が窘めるみたいなお決まりが存在してるから、今のところ全問正解者はなし」
「でもこれって、トロッコに乗った先輩に関するのクイズが出るんですよね?」
樹李君が落ちることなく、juryuiの名前を広める方法はただ一つ。
「要は俺が全問正解すればいいってわけですね」
木ノ瀬唯、最愛の樹李君の為に一肌、いや千肌でも脱ぎましょう!
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