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2話-①:恋人営業ではありません

ついに始まってしまった。樹李君が万が一にも億に一でも落ちる事はあってはならない。 「今日のチャレンジャーは今話題沸騰中のjuryuiさんです!」 「こんばんは〜!」 さすが樹李君。微塵も絶叫系が苦手だなんて思えない立ち振る舞い。こんな時でもプロ精神を大事にしているなんて……! 「今回トロッコに入るのは樹李君かな? 樹李君は 絶叫系は苦手だって聞いたけれど大丈夫そう?」 「そうですね、唯なら大丈夫ですよ」 スタジオからわぁ……!と歓声が上がる。せっかく樹李君が任せてくれたんだ、期待に応えて見せなければ。 「唯君相当プレッシャーなんじゃない? 先輩からの凄い期待貰っちゃって」 「嬉しいですよ? 樹李が俺の事を信じてくれてるってことですよね。光栄です」 モニターに大画面に映し出された樹李君の極上スマイルに危うく悩殺されかけた。というか心の中ではしてる。流石に俺に向けてこの笑顔を向けてるって思っていいですよね!? 私信すぎる……! 「僕の相方は世界一カッコイイですね。負けないようにしないと」 樹李君からの世界一カッコイイいただきました……!ありがとうございます、俺の寿命が5億年伸びました……! 「juryuiってデビューしたばっかりだよね!?既に熟年感が……!これは番組初の全問正解に期待です! わかったタイミングで押してくださいね! それでは早速参りましょう〜!」 モニターは樹李君の少し緊張した顔と問題文に切り替わる 「箕輪樹李の初出演のドラマ次のうちどれ……」 「陽だまりの庭にて、です」 こんなの選択肢が出るまでもない。樹李君オタなら当然答えられる問題だ。ピンポンピンポンのSEが鳴って拍手が上がる。 「凄いですね、まだ選択肢も出ていなかったのに」 「樹李に少しでも安心して欲しくて。絶対俺が樹李を落とすなんてこと、しないから」 その瞬間、樹李君の顔が少しだけ赤らむ。咄嗟に隠すように口元を押えていたけれど、バッチリ網膜に焼き付いてます。思わずセットの回答台に手を着いてしまったけれど、あまりの可愛さに後ろに倒れなかっただけ偉い。 「唯君と樹李君の絶対的信頼感が分かりますね〜!もう2人だけの世界じゃないの! では続いていきますよ!」 「今まで作ったことがない料理の中で次に挑戦してみたいと思っている料理はどれ」 「ビーフストロガノフ」 「作曲中に必ず食べるチョコレートの種類は」 「ボムボムプリンのはちみつプリンチョコレートとカカオ98パーセント大木」 「影響受けたアーティスト、全て答えよ」 「弱者の反撃、ワールドエンド、スズメバチ、はじめましてタニタ」 順調に答えられて良かった。あまりにも簡単だから寧ろ俺が問題作りたいくらいだ。 「凄い、唯君本当にここまで全問正解です! 本当にカンニングしてないんですよ皆さん! 前代未聞の展開に制作陣も動揺してます!」 そして画面にはデカデカと最終問題が映し出される。そこには樹李君もお答えくださいとの文字が。 「あまりにも唯君が完璧すぎるので進行台本が変更になりました! 樹李君には今食べたいものを書いてもらい、唯君がそれをピタリと当てたら正解です!」 ここのスタッフはどうしても樹李君の落ちる姿が見たいのか……!許すまじ……樹李君がどれだけ絶叫系苦手か知らないとは……! 神様お願いします、今だけ透視能力をください!流石に樹李君の事を知っていてもそれは所詮オタクの知識でしかない。今の樹李君の気持ちなんてオタクには分からないよ……! 絶体絶命の中、俺の顔がドアップになる。仕方ない腹を括るしかない。 「樹李と俺は一心同体なので簡単ですよ」 「流石の自信ですね! 樹李君かけたら合図をください」 「……分かりました」 俺は覚悟を決めて目の前のモニターの少し緊張した面持ちの樹李君を見つめた。

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