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8.理想の未来へ(10)※

 七月の土曜日、泰徳がキッチンにやってきた。 「澄人、洗濯物を干し終わったぞ」 「ありがとうございます。昼食は何にしますか」  冷蔵庫を開けようとした澄人の体が背後から抱きしめられる。 「昼食より、洗濯物が干せた褒美が欲しい」  顎を掴まれて肩越しに唇を塞がれた。シャツの上から大きな手に胸をまさぐられる。それだけで硬くなった尖りを爪が弄る。痺れる刺激が下腹に繋がり、ジーンズがきつくなってくる。ベルトをはずされた。 「調理台に手をつけ」  言われるまま、調理台の天板に縋る。下着ごと足首までジーンズを下ろされ、すぐにローションに濡れた指が後孔に潜りこんでくる。 「昨夜したばかりだからまだ柔らかいな」  恥ずかしさに身を捩る澄人の中で二本の指が蠢く。弱いところをやわやわと指の腹が揉むとたまらずに調理台に腕を置いて額を乗せた。石の冷たさが心地よいくらいに、体はほてりだしている。指で開かれた蕾に泰徳の楔が一気に押しこまれた。ひっと息を呑み、背を反らす。しかしそれも一瞬で、泰徳が抽挿で肉壁を擦られると内部も思考も蕩けだす。 「あ……きもち、い、やすの、さ……」  自ら腰を振り、泰徳をもっと奥へと(いざな)う。  澄人が住まいを泰徳の部屋へ移し、お手つきとなったと知ると、父は泰徳に頭を下げた。 『身分卑しき白井に名を連ねる愚息ではございますが、これの泰徳様への忠誠と親愛は本物でございます。末永く可愛がってくださいますよう、お願い申しあげます』  それに対し泰徳は首を振った。 『俺にはもったいないような男だ。幸せにする』  泰徳がいっそう深くまで突いてくる。もうきれぎれに喘ぎを上げることしかできない。気が遠くなるほどの悦びに脚は震え、調理台に必死に縋った。その状態の澄人の欲望が泰徳の手におさめられ、扱かれた。あっという間に上りつめ、白濁をキッチンに散らした澄人を泰徳が容赦なく責めたてた。 「あ、も、もう、む、むり、やす、の、あ、あっ」  また瞼の内側に閃光が散った。 「す、すみとっ」  切なく名を呼ばれながら泰徳の熱を奥に注がれ、きつく抱きしめられた。澄人の頭に言葉が満ちる。  やすのりさま、しあわせです……  それは唇にのぼることはなかったが、抱擁の中、泰徳から与えられるキスに応じることでその代わりとした。  一息ついたところで泰徳が笑った。 「キッチンを汚してしまったな」 「掃除しましょう」 「わかった。やり方を教えてくれ、パートナー様」  いたずらっぽい顔で泰徳が澄人の頬にキスをくれた。澄人もキスを返す。  昨日、澄人は泰徳とともに区役所へ行き、互いをパートナーとする届けを提出した。区役所へは蝉時雨の道を泰徳と手を繋いで歩いていった。焼けるような暑さと蝉の鳴き声、そして手のひらの熱は、きっと一生忘れない。  泰徳の胸にしっかりと抱きしめられながら澄人はそう思った。

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