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「どうしようもない変態だな。でもまあ、上手くできたから褒美をやるよ。蒼生、ここにいる全員を、フェラでイかせろ」
「え……そ、それは」
「喋っていいって言ったっけ? 蒼生はそんなに仕置きされたい?」
自分が好きなのは旭だけ。だから、それは嫌だと伝えたかったが、苛々とした口調で問われて蒼生は言葉を詰まらせる。
「でも……」
「あー、ムカつく。我が儘 なSubならいらないんだけど……いつも言ってるよな。俺が許すまで喋るなって」
強い視線を向けてきた旭に「分かったかクズ」と付け加えられ、蒼生は必死に頷いた。旭にだけは嫌われたくなかったのだ。
なぜ、こうなってしまったのかは分からない。けれど、優しかった旭がここまでするのだから、原因は自分の方にあるのだろう。
(でも、どうして旭は……)
「ん、ぐぅ……ん」
次々に口へ突き入れられる性器を必死に受け止めながら、蒼生は思考を巡らせるけれど、うまく頭が働かない。しかも、心に反して体のほうは徐々に愉悦へと侵されてしまい、答えは形を成さないままに、意識の底へと消えていった。
***
『蒼生先輩、大丈夫?』
心配そうな旭の声が、どこか遠くから聞こえてくる。『平気だよ』と返事をすれば、ホッとしたような笑みを浮かべて優しく頬を撫でてくれた。
(もう、あんな笑顔は見せてくれないだろうけど)
これは夢だと分かっているから、蒼生は泣きたい気持ちになる。優しかった旭が突然変わった理由を、尋ねる機会はもらえなかった。
蒼生が旭を知ったのは、2年生の春だった。新入生代表として挨拶をする彼の姿に、胸が高鳴りを覚えたことを、今でも良く覚えている。同時に自分が同性愛者であることを、蒼生ははっきりと自覚した。
旭と蒼生に接点は無く、本来ならば関わることも無いままに、高校生活を終えるはずだったのだが――。
「んぅ……」
目覚めると、辺りは暗闇に包まれていた。
(……寒い)
いったいここはどこだろう? などと回らぬ頭で考えながら、起きあがろうと試みた蒼生は、突如強烈な胃痛に襲われ、その場で体を小さく丸める。
「う……う」
耳を澄ませれば、雑踏と車の音が遠くから聞こえてきた。
(そう……だ)
生徒会室での行為が済んだあと、用は済んだからすぐに出て行け……と、冷やかに命令され、蒼生はすぐさま学校を出た。ただ、あまりに体調が悪かったため、どうやって歩いてきたのかは断片的にしか覚えていない。
吐き気と眩暈 、それに加えて激しい胃痛に襲われながら、どうにか前に進んでいたが、とうとう限界を迎えた蒼生は、ふらつきながら人気 の無い路地へと入った。雑居ビルにある非常階段下のスペースに座り込み、ほんの少しだけ休んでいこうと思ったのだが――。
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