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次に蒼生が目覚めた時、辺りは暗くなっていた。常夜灯 が点いているから、自分がベッドで寝ていることは理解したが、ここまで来た記憶が無い。
(どうしたんだっけ?)
律の提案に同意したあと、早めの夕飯にしようと言われ、出された粥 を食べたことは覚えている。
あとで食べると言った律は、蒼生が食器を空にすると、「えらい」と頭を撫でてくれた。それから、風呂を沸かすから待つように言われ、ソファーに座っていたのだが――。
(また、迷惑かけた)
眠ってしまった蒼生を律がここまで運んでくれたのだろうが、広い室内を見渡してみても彼の姿はどこにもない。
(喉、渇いた)
ノロノロと起き上がり、ベッドを降りて移動した蒼生は、2つ並んだドアのひとつを開けようとしたけれど、そこには鍵がかかっていた。もう片方のドアを開くと、センサーがついているのか? 室内の照明がつく。そこにはトイレと洗面台があり、洗面台の脇は透明なドアによって仕切られていて、その奥は広いバスルームになっていた。
(ホテルみたい)
いったん部屋へと戻ってから、ベッドの反対面へ移動して、壁一面にかけられているカーテンを少し開いてみる。と、真っ暗な空に白い雪が舞っていた。
「……綺麗」
思わず声が出るけれど、あまりに小さなそれはすぐに空気へと溶けて消え、再び静寂が訪れる。
(静かだ)
蒼生が一人暮らしをしているアパートは、壁が薄い訳ではないが、時折 他人の生活音が聞こえてきた。それに馴れてしまっているため、今の状況はあまりに静かで落ち着かない。
降り続く雪を見ているうちに得体の知れない不安が募り、逃げるようにベッドへ戻った蒼生は布団を頭から被り、体を小さく丸めるが……待ってみても眠気はまったく訪れなかった。
(きっと、誰も気づかない)
今日は休校だったらしいが、仮にそうじゃないとしても、蒼生が休んだくらいでは、旭は心配しないだろう。風邪で数日休んだ時も、理由は尋ねられなかった。ただ、いなかった日に溜まった鬱憤 をまとめてぶつけられただけだ。
(考えたら……ダメだ)
脳裏に浮かんだ旭の姿を振り払うように、蒼生は軽く頭を振る。夜中の思考は不安定になりがちだから、止めなければならないと考え、耳を塞いで瞼を閉じた。
しかし、やはり眠気は訪れず、少しの間そうしていると、どういうわけか体の奥がじわじわと熱くなってくる。
「……なに?」
驚きに声を上げた蒼生だが、この感覚には覚えがあった。Domに命令をされた時、襲ってくる感覚だ。
(なんで?)
それが、どうして今、自分の体を苛 むのかはわからない。駄目だと思うのに勝手に手が動いてしまい、気づいたときには自分の下肢へと触れていた。
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