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 途端、薄暗かった室内にパッと灯りがつく。 「……っ」  眩しさに目を(またた)かせている蒼生の耳に、「蒼生、仰向けになれ(Roll)」というコマンドが響いてくる。  突然のことに驚いていると、布団を()いだ律がもう一度、「蒼生、Roll」と、今度はゆっくり言い聞かせるように告げてきた。 「……あっ」  刹那、強い衝動に突き動かされ、多幸感に包まれた蒼生は、さっきまで自慰をしていた下肢を、隠すこともしないままにベッドの上で仰向けになる。 「いい子だ」  すると、端正な顔が近づいてきて、頬へとキスが落とされた。初めてのことに驚くけれど、同時に嬉しいという感情が心の奥からわき出してくる。  律は蒼生に長めのシャツしか着せていないから、それがはだけてしまった今、僅かに勃ってしまった性器を隠すものは何もなかった。 「全部、脱いじゃおうか」  言いながら、シャツのボタンを律が外している間、愉悦と羞恥の狭間(はざま)で揺れる蒼生の脳裏に、『レッド』の文字がちらつくけれど、それを声に出すことはできない。  Domの命令は絶対で、逆らうことなどできないのだと、旭からの躾によって体が覚え込んでいた。 「キスをしたことは?」 「……うぅっ」  鎖骨のあたりを指でなぞられ蒼生は体を(よじ)らせる。恥ずかしいから逃げ出したいと思う反面、律の瞳に見つめられると、体の芯が甘く疼いて思考が鈍くなってしまう。 「蒼生、答えて」 「……ないです」  震える声で必死に答えを紡ぎ出すと、一瞬だけ驚いたような表情を見せた律は微笑み、「教えてくれてありがとう」と、額へとキスを落としてきた。 「少しだけ口を開ける?」  言われて素直に唇を開く。すると、膝立ちになって蒼生の腹を跨いだ律が、体を折り曲げ端正な顔を近づけてきた。 「蒼生。Kiss(キスをして)」  そして、放たれたのは思いもよらない命令(コマンド)――。 (今、なんて?) 「聞こえなかった?」  至近距離まで近づいた律が動きを止め、「蒼生、Kissだ」と言いながら、薄く開いた下唇を人差し指でなぞってくる。 「……あ、あの、それは……」 「嫌ならなんて言うんだっけ?」 「……」    戸惑う蒼生を導くように、律が質問をしてくるけれど、セーフワードを使いたいとは思わなかった。それよりも、律から貰った命令(コマンド)に、従いたい、褒められたいという欲求が心と体を突き動かす。 「蒼生?」  だから、蒼生は自身の本能に従い律の唇へキスをした。それは、軽く触れるだけのものだったけれど、触れた瞬間……まるで電気が流れたみたいに蒼生の体がビクビクと跳ねる。

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