17 / 41
16
途端、薄暗かった室内にパッと灯りがつく。
「……っ」
眩しさに目を瞬 かせている蒼生の耳に、「蒼生、仰向けになれ 」というコマンドが響いてくる。
突然のことに驚いていると、布団を剥 いだ律がもう一度、「蒼生、Roll」と、今度はゆっくり言い聞かせるように告げてきた。
「……あっ」
刹那、強い衝動に突き動かされ、多幸感に包まれた蒼生は、さっきまで自慰をしていた下肢を、隠すこともしないままにベッドの上で仰向けになる。
「いい子だ」
すると、端正な顔が近づいてきて、頬へとキスが落とされた。初めてのことに驚くけれど、同時に嬉しいという感情が心の奥からわき出してくる。
律は蒼生に長めのシャツしか着せていないから、それがはだけてしまった今、僅かに勃ってしまった性器を隠すものは何もなかった。
「全部、脱いじゃおうか」
言いながら、シャツのボタンを律が外している間、愉悦と羞恥の狭間 で揺れる蒼生の脳裏に、『レッド』の文字がちらつくけれど、それを声に出すことはできない。
Domの命令は絶対で、逆らうことなどできないのだと、旭からの躾によって体が覚え込んでいた。
「キスをしたことは?」
「……うぅっ」
鎖骨のあたりを指でなぞられ蒼生は体を捩 らせる。恥ずかしいから逃げ出したいと思う反面、律の瞳に見つめられると、体の芯が甘く疼いて思考が鈍くなってしまう。
「蒼生、答えて」
「……ないです」
震える声で必死に答えを紡ぎ出すと、一瞬だけ驚いたような表情を見せた律は微笑み、「教えてくれてありがとう」と、額へとキスを落としてきた。
「少しだけ口を開ける?」
言われて素直に唇を開く。すると、膝立ちになって蒼生の腹を跨いだ律が、体を折り曲げ端正な顔を近づけてきた。
「蒼生。Kiss 」
そして、放たれたのは思いもよらない命令 で――。
(今、なんて?)
「聞こえなかった?」
至近距離まで近づいた律が動きを止め、「蒼生、Kissだ」と言いながら、薄く開いた下唇を人差し指でなぞってくる。
「……あ、あの、それは……」
「嫌ならなんて言うんだっけ?」
「……」
戸惑う蒼生を導くように、律が質問をしてくるけれど、セーフワードを使いたいとは思わなかった。それよりも、律から貰った命令 に、従いたい、褒められたいという欲求が心と体を突き動かす。
「蒼生?」
だから、蒼生は自身の本能に従い律の唇へキスをした。それは、軽く触れるだけのものだったけれど、触れた瞬間……まるで電気が流れたみたいに蒼生の体がビクビクと跳ねる。
ともだちにシェアしよう!